しだれ桜の参道を抜ければ2013/04/04 18:00

しだれ ほんのりさくら色
OLYMPUS E-5
ZUIKO DIGITAL ED 50mmF2.0
アートフィルター:ライトトーン
撮影場所:山口市徳佐神角





物心ついてから学校を卒業するまでの間、

春には毎年のように出会いや別れがあった。

人生の大きな区切りを迎えて新しい場所に足を踏み入れるとき、

そこにはいつも満開の桜があって門出を祝福してくれたのを憶えている。

その頃にはたぶん今よりもずっとピュアだった僕の心には

「ここで頑張りなさい。」と励まされているように感じられ

そのことは、今でも普段は意識することのない記憶の奥底にあって

生きるうえで知らずのうちに心の支えとなっているように思う。

そのうちに大人になって社会に出ると、春という季節を特別に意識することもあまりなくなり

気がつけば人生の半分以上をそんな心持ちのまま生きてきたように感じられる。

ところが趣味として写真を撮ることをはじめてから、

再び春が特別な意味を持つようになってきたのである。

季節の風物詩を追いかけて自分の世界の中を忙しく歩き回り

それを何年も繰り返していると毎年新しい季節に出会ったとき、

その季節を無事に迎えられたことがとても幸せなことと感じられるようになってきたのだ。

いつの頃からか、毎年桜の季節に訪れる場所があって、

古い八幡様の社に続く参道を満開のしだれ桜を見上げながら歩く。

そうして社の前に並ぶと神主さんが参拝客ひとりひとりの垂れた頭に

御幣をふるってお祓いをしてくれるのだった。

それはお祓いというよりも、新しい春を迎えられたことを祝福してくれているようであり

大した信仰心など持ち合わせていない僕でも、

ここに来れば本当に春が来た喜びを実感することができるのである。

ひょっとすると一年で一番厳かな気持ちでお参りするのはこのときかもしれない。

お参りが済めば、いつものように屋台で買い食いなどしながら

また参道に戻ってカメラを手にしばらく遊びに興じるわけだ。

ここのしだれ桜は古木が多く、

小さなさくら色をたくさんつけた枝が時折風に吹かれて頭を撫でる。

そんな光景の中に身をおいていると

お参りのときに感じたくすぐったいような御幣の気配がよみがえり

僕は今年も頭上にある神様の存在を確信するのだった。

一の坂 春の夢2013/04/03 21:25

一の坂 春の夢
OLYMPUS STYLUS XZ-2
i.ZUIKO DIGITAL ED6-24mmF1.8-2.5
アートフィルター:ライトトーン
撮影場所:山口市一の坂河畔





このブログでも何度か書いているように山口一の坂は僕のお気に入りの場所で

毎年、桜の季節、ホタルの季節、

そして秋のアートふる山口が開催される頃には必ず訪れる。

室町時代にこの地に本拠を構えていた大内氏が京の都を模した街づくりをして

その折にこの一の坂川を鴨川に見立てたというのは有名な話だ。

石垣の組まれた川の両岸に桜並木が続き、

ホタルが住めるように工夫されているという川の畔には

この季節、黄色い菜の花が咲き乱れて文字通り春の景色に花を添える。

風流を解さない僕もこの場所で花を見ながら歩くときだけは

無粋な一眼レフをなるべく持ち歩かないようにしていて

それでもカメラを持たずに歩くなんてことはできるはずもなく

そこで活躍するのが小さなコンデジなわけだが、別にコンデジに限ったわけではなく

きょろきょろと花を楽しみながら軽やかに歩きたいときのお供には

PENくらいの意匠ならば許せるかなというのが大した根拠のない僕の美学というものだ。

ところでコンデジというものは御存じのとおり被写界深度が深く

パンフォーカスが基本の風景写真を撮るには都合がいい。

反面、花に寄って大きなボケの中に被写体を浮き立たせるような写真は撮りにくいわけで

そのことがなぜか大きなカメラに比べて性能が劣っていると誤解を受ける所以となっている。

性能が劣っているわけではなく、それがセンサーの小さなコンデジの特性だということだ。

もちろんセンサーの大きさに余裕があるほうが画質がいいというのは

一般的に正しいということに異論はない。

でもたぶんそれは「目を皿のようにして」見ればようやくわかるくらいの差でしかないのだ。

僕がこの日、E-5とXZ-2を持ってきたわけは、場所によってメインを使い分けるためで

けっしてXZ-2をE-5のサブに持とうと思ったからではない。

むしろE-5のサブを持つならXZ-10だろう。

が、XZ-10もTG-1ですらシチュエーションによっては立派にメインを務める実力を秘めているのである。

そしてコンデジが苦手なはずの「寄り」を敢えて撮ったのが

「一の坂 春の夢」というわけだ。

明日はE-5に50mmF2.0Macroの組み合わせで撮った写真を載せてみよう。

プロが撮ったのなら話は別だが、僕がパシャパシャ撮った程度なら

きっと自分でもどちらで撮ったかわからない程度の差でしかないはず…。

歩く洗濯機2012/09/24 20:46

始まりの赤
OLYMPUS E-5
ZUIKO DIGITAL ED 70-300mmF4.0-5.6
アートフィルター:ライトトーン
撮影場所:山口市小鯖八幡宮




我が家にはずいぶんと前から使っている洗濯機があって、

これが仕事をし始めると、家全体がゴトゴトとそれは賑やかになる。

脱水の初めにブルッと一度震えたかと思うとピーピーわめいて

布が片寄っているから直せと訴える。

直してやればやったでごっとんごっとんと巨体を震わせて

律儀にまたすすぎからやり直すわけだ。

そして脱水の初めの布片寄りをどうにかクリアしたと思ったら

今度は洗濯パンの中をのっしのっしと歩きながら水分を弾き飛ばすわけである。

そんなどうしようもないポンコツ洗濯機が、先日その役目を解かれて去っていった。

新しく家に来たのは放っておけば乾燥してアイロンまでかけてくれるという新型だ。

さっそく使ってみると、洗濯機が仕事をしていることなど忘れてしまうほど

静かにきっちりといい仕事をする「できる奴」だった。



「静かな洗濯機なんて…」



もちろん静かで仕事のできる奴がいいに決まっているのだ。

なのにあのわがままでうるさかった奴が居なくなったのがなぜかちょっぴり寂しくて

ピーピーとわがままを言っても蹴飛ばさずにもう少し優しく使ってやればよかったなと

秋風とともに愁いをおびてきた僕の心がしんみりと思いだすわけである。

あぁ、また秋だ。

秋になるといつもこうなのだ。

夜が長いと想うことも多いものなのである。

人生晴れたり曇ったり2012/01/14 21:55

人生晴れたり曇ったり
OLYMPUS E-P1
M.ZUIKO DIGITAL 45mmF1.8
アートフィルター:ライトトーン
撮影場所:山口市吉敷龍蔵寺




山口市の街のはずれに龍蔵寺という古刹がある。

古刹というわりには少し俗っぽいところに親しみが感じられて、

季節の便りを聞きにしばしば訪れるお気に入りの場所だ。

この日は寒牡丹の花が満開という噂を聞きつけてここを訪れた。

本堂へ上がり込んで牡丹の花を堪能し、

外へ出て焚き火にあたりながら暖かいぜんざいをおやつにいただき、

あくしゅ地蔵の手を握ったり、

ぐち聞き地蔵の耳に愚痴を言ってみたりしながらしばしここで過ごす。

妻が傘の形をしたおみくじを引いてきた。

ごく普通に良いことが書いてあったらしい。

人生晴れたり曇ったり…、

おみくじに書いてあったことに一喜一憂するのも、

それは信仰心であることに変わりはなく、

心に雨が降りそうになれば、ここにまた雨宿りに来ればいい。

晩秋の彩2011/11/24 22:19

晩秋の彩
OLYMPUS E-5
ZUIKO DIGITAL ED 50mmF2.0
アートフィルター:ライトトーン
撮影場所:山口市両足禅寺




もみじの葉が傷んでいたり、色づく前に落葉したりと、

初めはずいぶん心配した今年の紅葉シーズンも終盤となり、

終わってみれば例年の通りそれなりに美しい彩を見ることもできた。

カメラを趣味にしてからこれまでのあいだ、

ずっと「きれいなもの」だけを見たいと思っていたような気がする。

今年はそんなわがままを神様が少し戒めてくれたのかも知れず、

葉が傷んでいれば樹を見ればいい、

樹が傷んでいれば森を見ればいい、

森もだめなら山全体の彩を見ればいい、

そんなことを考えれば、秋を見る視点も変わり、

「きれい」でなくとも心を捉える風景が見えてくる。

考え方を変えると見えてくるものがあり、

歳を重ねると見えてくるものもあり、

人生だってそのうちには見えてくるのかも知れず、

まだまだ「見るべきほどのことは見つ」と言うわけにはいかない。

ふるさと2011/10/07 20:57

夕照のコスモス畑
OLYMPUS E-P1
M.ZUIKO DIGITAL 17mmF2.8
アートフィルター:ライトトーン
撮影場所:山口市秋穂





最近、仕事の関係である老人施設を何度か訪れた。

訪れるたびに目にするのは

秋晴れの穏やかな陽射しの中にくつろぐお年寄りが数人…。

打ち合わせを終えて帰るときに

馴染み深い唱歌の歌詞が壁に貼ってあるのを見た。

二番までは憶えていた歌詞を目で追って、

三番を心の中で口ずさみ…、

気がつけば声に出して口ずさみ…、

穏やかな午後の光に照らされた壁に

大きくマジックで書かれた詞を繰り返し読み返し、

ふと「この詞をここで唄うのか…。」と思うと

わけもなく涙がこぼれそうになった。


     こころざしをはたして

     いつの日にか帰らん

       山は青きふるさと

       水は清きふるさと

                           文部省唱歌より引用